これは、人工知能(AI)のトピックとその産業応用について考察する連載ブログ記事の第1回です。
初めに申し上げておきますが、これはAIに関する月並みなブログを意図していません。この連載記事で私が行いたいことは、特に資産集約型企業への応用可能性の観点からAIの共通理解と定義を示すことです。
しかし、問題はAIが人によっても状況によっても異なる意味を持つことがあり、概念を定義しにくいことです。これは、そもそもそれ自体が実のところテクノロジーではないことに起因します。AIとは、知性的に振る舞うシステム(プロセス、資産、または機械)を実現するために集められた各種テクノロジーの集合と表現するのが最も適切かもしれません。
この概念を拡大して適用すれば、AI対応ビジネスアプリケーションは感知、理解、実行、学習を支援することにより、システムの知性的な振る舞いを可能にするという目的を果たします。機械学習やディープラーニングによるシステムのトレーニングは、知性的な振る舞いを実現する中核要素であり、パフォーマンス、精度、および品質の最適化に驚異的な威力を発揮します。
「AIのコンステレーション(配置)」
多くの企業がAIプログラムおよびデジタライゼーション計画の策定に着手していますが、その目的が画期的なイノベーションにせよ、日々のカスタマーサービスにせよ、生産性向上に向けた全社的な取り組みにせよ、AIのパラダイムシフトと結果として生じるあらゆる社内ビジネスプロセスの変革の本質を捉えやすくするためのフレームワークが必要です。AIの定義や説明を試みたフレームワークは数多く存在しますが、その中で最も直感的かつ論理的なのが、Paul R. DaughertyとH. James Wilsonによる書籍『Human + Machine: Reimagining Work in the Age of AI』の中で紹介されている「AIのコンステレーション(配置)」というパラダイムです。
このパラダイムによると、企業AIは3つのレベルで考えることができます。レベル1では、企業はデータを利用してステークホルダーに対する価値を高めるユースケースやビジネスアプリケーションを定義します(なぜとなにを)。レベル2では、ビジネスアプリケーションの強化のために利用可能な一連のAI機能に注目します。そして、最終的に(最も重要な)レベル3では所定のAI機能を実現するために用いることができる各種機械学習手法に注目します(どのように)。
一例として、資産集約型産業における最も説得力のあるAIのビジネスアプリケーションの1つは処方的保全です。このフレームワークを用いた場合、レベル1では計画外のダウンタイムの削減、資産の寿命の延長、および全体的な生産性向上をシステムに依存する産業内でのアプリケーションの普及が進みます。
レベル2では、これらのビジネスアプリケーション(またはインテリジェントソフトウェアエージェント)は、1つ以上のAI機能を利用して資産の点検整備が必要な時期を予測することができます。レベル3では、回帰やニューラルネットワークモデルによる教師あり学習から、パターン検出のための半教師あり学習までの多種多様な機械学習(ML)手法に基づくAI機能を利用します。
各AIユースケースやビジネスアプリケーションは、基本的にこのフレームワークを用いて分解することができ、それによって全体的なAIプログラムの構築、各AIイニシアティブのビジネス価値の明確な分析、およびAIプログラムへの投資と運営に必要なベースライン要件の把握が可能になります。
「AIのコンステレーション」は、企業がAIプログラムを進めていく上で用いることができる強力なフレームワークです。このフレームワークは、ユースケースやアプリケーションのビジネス価値を重視しており、AI機能を実現するための前提条件に焦点を当て、その基礎になるAI/ML手法の複雑さにとらわれないようにするのに役立ちます。その進歩に伴い普及が加速しているAI/MLテクノロジーは、エンタープライズレベルのデジタルトランスフォーメーションを支える重要な柱になりつつあります。
資産集約型産業におけるAI/MLの導入
説得力のあるユースケースが存在し、企業のAI導入から得られる大きなビジネス価値があるにもかかわらず、プロセスベースの資産集約型産業におけるAI導入は他の多くの業界に比べて立ち後れています。その主な理由の1つは企業の成熟度です。
この問題は、新たなスキルの必要性と品質データの不足によって特徴付けることができます。ガートナー社が最近実施した調査では、企業リーダーの56%はAIに対応した課題を達成するために最新のスキルが必要だと思うと答えており、回答者の34%がAIプロジェクトを実施する際の主な問題としてデータ品質の低さを挙げています(そうした意見を踏まえても、現状の資産データから優れた結果を得られるよう技術を駆使して、処方的保全のAI化を進める価値は大いにあります)。
AIの導入が進まないもう1つの理由はメリットやユースケースに対する理解不足です。先のガートナー社の調査でも42%の回答者がAIのメリットまたは間接的な投資利益(ROI)をあまり理解していないと答えています。AIプロジェクトの利益の数値化は、企業リーダーにとって大きな課題となっています。2024年までにAI投資の半数が数値化されて具体的なキーパフォーマンス指標と関連付けられ、それによってROIの測定が可能になるでしょう。
このように、業界全般にわたってやるべきことはまだまだありますが、出発点はAIとは何かということについて共通の理解を深め、AIプロジェクトの可視化に役立つシンプルなフレームワークを構築することです。次回以降のブログ記事ではこれを基礎に置きながら、AIを応用してデジタライゼーションジャーニーを推進する上でのベストプラクティスのほか、資産集約型産業にとっての主なメリットと陥りやすい落とし穴について探ります。
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※本記事は、「What Is AI? The 10,000-Foot View 」の参考訳です。
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